自給率向上

その茶わんにこれからもご飯が入るでしょうか?

お茶碗

私たちが生きていくうえで欠かせない、米・大豆・小麦の「三大穀物」で自給できるのはただ一つ、米だけというお寒い状況です。ところが米を作るには高額な設備投資が必要です。500万円は下らないコンバインもさることながら、田の準備段階である「田起こし」にはトラクター(100~170万円)、「田植え」には田植え機(130~170万円)、収穫した後、自分で「籾すり」や「精米」もするとなると乾燥機をはじめとする機械も必要になります。

一方で米の価格は下がる一方。食習慣の変化や人口減で消費量も減っています。米作りのリスクが増大する中、これまでの日本を支えてきた家族農業では稲作の継続が困難になっています。コストを下げるために農地の集約、家族農業から法人農業への転換が進められ、生産効率を上げるのが難しい山間の棚田のような土地は耕作放棄が目立つようになりました。身近な水田風景は徐々に狭まっているのです。

食料自給率の推移山林

縁故米運動

2006年8月、会員農家のコメの生産を維持していくために、生産者と消費者とで「縁故米基金」を設けました。基金は「縁故米運動」の趣旨に賛同する生産者と消費者が、コメ1kgあたり20円を基本に、出荷量と注文量に応じて拠出した寄付金を財源とします(消費者は任意)。集められた基金は右のような事業に運用されます。

  1. 1.生産の維持と後継者育成の支援
  2. 2.米の生産量不足のための備蓄
  3. 3.米加工の生産者と協力しての余剰米の有効利用
  4. 4.消費拡大のためのキャンペーン費用
  5. 5.天災等による被害への経済的支援

その卵やお肉、本当に国産と呼べるのでしょうか?

飼料自給率

これは2018年度の政府公開の統計資料にある「食糧自給表」の中にある、家畜の餌の自給率を表す「飼料需給表」ですが、野菜くずや生草、サイレージなどのことを指す「粗飼料」こそ、国内の野菜などを充てて比較的高い自給率を出していますが、トウモロコシに代表されるカロリーの高い「濃厚粗飼料」はお寒い状況です。
輸入のほとんどをアメリカ大陸などからに頼っており、輸入が途絶えれば食卓に肉がのぼらなくなることだってあり得るのです。豚肉や牛肉も割合こそ違えど海外に餌を依存しているのは同じです。

国産飼料100%の鶏=「自給卵」

28週を過ぎて成鶏になった鶏は1日100~110g程度の餌を食べるとされています。一般的な養鶏は配合飼料と言って、トウモロコシにふすまや魚粉などを混ぜてパッケージ化されたものを与えています。規模の大きい養鶏場となると、1日で何トンもの配合飼料を消費すると言われています。この配合飼料は「二種類混合飼料」-通称“二種混”と呼ばれています。

昨今の世界情勢を見る限り、経済不安や気候変動により外国から安定して飼料を輸入できる保証が無いばかりか、「二種混」の価格も値上がりし続けています。そして、循環型農業養鶏を実践している養鶏生産者にとっても、与える飼料も国産もしくはその地域で収穫されたものを使うのが本来の姿だと認識しています。

そんな中、私たちは、2015年に設立40周年記念を迎える事をきっかけとして「地域循環養鶏プロジェクト」を立ち上げました。このプロジェクトを担って頂いたのは、使い捨て時代を考える会の農場でもある「この指とまれ農場」でした。

地域循環養鶏プロジェクト

トウモロコシを使わない養鶏

鶏など家畜のエサの主流であるトウモロコシはほぼ全てが輸入品となるわけですが、これは飼料の自給率に大きく影響を与えており、卵自体は96%以上が国内自給されているにも関わらず、その鶏に与える餌の自給率はたったの10%というから驚きです。

三重県伊賀市にある、私たちの農場「この指とまれ」にある鶏舎で、トウモロコシのエサを止めてお米主体のエサに切り替えてみました。その詳細な内容は以下のとおりです。

お米主体のエサに切り替えてみました。

ヒヨコ時代

トウモロコシが主の「二種混合飼料」を与えないで、代わりにクズ米50%→40%(ゆっくりと体を作るため、成鶏になった時に減らす)・米ヌカ15%~30%を入れます。その他、魚粉・大豆粕・カキガラ・発酵飼料・醤油粕・緑餌を数%与えます。

大きくなってから

大人(成鶏)に成長した6か月以降も二種類混合飼料は与えない。クズ米20%・米ヌカ60%を入れますが、季節によって微妙に量の調整をする(例えば、夏場は鶏の食欲が落ちるので、米ヌカを減らして食べやすいクズ米を増やす)。その他、魚粉・大豆粕・カキガラ・発酵飼料・醤油粕・緑餌を数%与え続けます。

メリット

・輸入トウモロコシの相場に左右されることなく、日本の数少ない自給穀物であるお米を用いることで世界情勢の変動を受けにくい。

・その地域で収穫した農産物をエサに使えるので、輸送にかけるコストや排気ガスを削減できる。

・食べてみた方々の感想ですが、「卵特有の臭みがない」、「アレルギーで卵は食べないようにしているがこれなら大丈夫だった※」というお声を頂いています。
※あくまでも個人差があるのでアレルギーの方全てに当てはまるわけではありません。

デメリット

・飯米の作柄が良い年はくず米が出にくい→エサが確保しにくい

・トウモロコシを使った鶏に比べると卵を産むペースが若干鈍る

昭和40年代まではどこの農家でも鶏を飼っており、そのエサも営農で出たくず米や出荷できなくなった野菜が主流で輸入トウモロコシの比率はそう高いものでなく、十分に身の回りにあるもので何とかなったのです。
私たちヒトが直接に口にするものだけではなく、それぞれの食べものが世に出るまでのプロセスという、「本当の自給率」を私たちは日々追求しています。

顔が見える関係

インターネットを介したITの普及に伴い、「いつでも、どこでも」有機野菜やオーガニック食品と呼ばれるものが手に入るようになりました。その一方で産地偽装や表示内容の曖昧さをめぐる問題も後を絶ちません。
私たちは発足以来、産地-流通-消費の3者がお互い「顔の見える」関係でつながることを掲げてきました。
だからこそ、毎週、会員さん宅を回るスタッフは決まった担当者。
農家をはじめとする生産者とスタッフは、扱い品目別に担当者がいますので、お届けした食べものについて把握しています。

私たちは以下のことを提案します

  1. 1,人と人をつなぎます

    作る人と食べる人~お互いのご意見・情報を仲立ちします

  2. 2,対等な関係を築きます

    モノの売買はともすれば力だけの関係に陥りやすい。産地と消費、どちらが欠けても成り立たないという視点に立ち返り、人として対等な関係をめざします。

  3. 3,「共感力」を高めます

    豊作の時は喜びを、凶作の時は心の痛みを分かち合い、細かなコミュニケーションを取ることで、会員相互の共感力・想像力を高めます。

消費者の方にお話を聞いてみました

島野 聖美さん

島野 聖美さん
京都市中京区在住

パートナーと大学1回生、中学3年生、小学3年生の子どもたちとの5人家族。

最初は「何となく良いモノ」からのスタートでした

ある育児サークルのつながりの中で、この会の存在を知って入会したように記憶しています。当時は自分自身と子供のアレルギーがひどく、食べものを見直すことから暮らしを見直すきっかけになりました。
最初は「意識高い系」の団体っぽい感じがしてちょっと気後れした記憶がありましたね。当初はなんとなく、有機野菜や安全な食べものって、環境や子どもにとって「よいモノ」だろうな、という程度の認識でした。

注文どおり届かないことがあるんです

過剰な包装や広告が無くシンプルな所に美しさを感じました。
さらに卵が、スーパーで売っているのとは違い、1個1個大きさが違うなど、いろいろ発見がありました。夏や冬になると鶏が卵を産む数が減るので「注文どおりお届けできませんでした」と届けた人(専従職員)に言われて、鶏さんたちも暑い日寒い日ガンバってるんやなあと。そこから食べ物の命をより感じるようになりました。
子ども達も学校の調理実習でスーパーの卵を割り、家の(安全農産の)卵のカラの固さに気づいたようです。

土つきの野菜にその土地の姿が見えた

野菜も土つきのものもあり、当初は洗うのが正直手間でしたが、今では苦にならなくなりました。農家をやっている友達が「洗ったら日もちしなくなるよ」と言います。子どもたちにとっても、畑からそのまんま来ましたという感じの野菜は勉強にもなるし、農家さんやその土地の風景を想像することができるので大切なことだと思います。
子どもの成長と同じように、四季を通して体験して、本物の知恵が身に着くことを実感します。正直すぐには結果は出ないかもしれませんが、まず自分が安全農産を選んで続けることで元気になったというリアリティがあって、そこから家族の信頼へとつながっていきました

やっぱり野菜がおいしい!

野菜が美味しい!これは分かりやすいと思います。家族も自分たちが食べているものに興味を持ってくれるようになり、私が忙しい時に子どもたちに「この野菜で何か作っておいてね」と頼めるようになりました。

家族の健康を感じる

この会で扱っている廃食油から作った「マルダイ粉石けん」というものがあります。実を言うと私は液体せっけん派だったのだけど、衣料品関係の仕事をしているパートナーは、合成洗剤も含めいろんな洗剤を試して、最終的にマルダイ粉石けんが一番いいというお墨付きを得ました!
今では子どもたちが元気になって、頭痛持ちだった連れ合いも調子が良くなり、安全農産の農産物によって我が家の健康を支えてくれていることを実感しています。

生産者の方にお話を聞いてみました

湯浅 拓さん

三代続く生産者会員
湯浅 拓さん(40代)

南丹市園部町
トマト栽培に取り組む。

いつの間にか三代続いています

元は安全農産供給センターでスタッフをしていたんですが、2015年から就農しました。3人兄弟の末っ子で、いずれは実家の農業を継ぐのかなーなんてのんびり構えていたら、母が急逝してしまい、養鶏をやっていた父から「はよ帰ってこい!」と急かされて、京都市内の家を引き払って園部町の実家に戻りました。トマトや米、大カブラを作っています。平飼い鶏舎を2棟持っているのですが、この辺では鶏を飼っているのは、今はウチだけになってしまいました。

師匠でもある父親の洋次さん
犬と生活する鶏

昔はどこの家も鶏がいた

うちの祖父も「使い捨て時代を考える会」の会員でした。僕が中学1年の時に亡くなりましたが、後を継いだ私の父にいろいろ教えてくれ、今、それを父から僕が教わっているわけです。受け継がれるってすごいですね。
昔はどこの家も鶏を飼っていて、その中でも平飼い養鶏を志すグループがあり、祖父もそこに通っていて、そこの人脈を通じて安全農産供給センターに鶏卵を出すようになったそうです。いわば「卵」が我が家と会の出発点ですね。

つながりが広がっていく

昔からの農村なので、マチの方はガチガチの地縁を想像するかもしれませんが、父と母が近所づきあいをしっかりしてくれていたお陰で、帰ってからは温かく迎えてもらえました。以前、父は近所に同世代の農家がいないのを心配してくれていましたが、家の近くに会が購入した古民家をベースにして、若い方が集まるようになりました。「南丹交流の家」って言うんですよ。
今では、地域で有機農業を志す仲間がグループになり、その中には車で10分ほどのところに、Iターン組の若い家族が2世帯、一緒に会員に加わってくれ、トマトやお餅などを安全農産供給センターに出しています。農業でつながりが広がったんですね。

会員さんは親戚のようなもの

5年前まで安全農産供給センターで働いていて、毎日、会員さんと接点があったせいもありますが、時々誰かがウチを訪ねてきてくれる。よく知っている分、親戚のような感じがしますね。今は、8歳と5歳になる子供たちもトマトの箱詰めとか一緒にやってくれるようになり、家族や会員さんたちに支えられて今があるんです。

秋の収穫を会員さんたちと分かち合う

未来の食卓へ

もともと日本も自給率は低いというし、この先、日本の畑がどうなっていくのか漠然とした不安はありますが、まあ、これから子供たちの成長に合わせて、いろいろなものを作るのに挑戦していきたいですね。皆さん、ぜひ私たちの畑のものを食べて支えてほしいです。

新しくチカラになってくれる方に望むこと

「使い捨て時代を考える会」で扱っている品は、スーパーやネットショップなどで購入するよりも値段は少々高いものもあると思います。値段だけを見て高いと思うのではなく、その中・その向こうにあるものを見てほしいと思います。
会の生産者がどのように生産しているのか気になる方は、どんどんセンターに問い合わせていただいても結構ですし、直接生産者の所に来ていただいても結構です。我々、会の生産者は、食べてくれる方の顔を常に想像しながら、笑顔で食べていただけるよう生産努力しています。是非、会の野菜等を食べていただきたいです。

循環型農業

農業養鶏はリサイクル

私たちの養鶏は「循環型農業養鶏」ということを柱にしています。
鶏糞はわらなどと混ぜながら発酵させ、有機農業に最適の鶏糞堆肥として田んぼや畑の土を肥沃にしてくれます。この堆肥を使って出来たお米・野菜は消費者の皆さんに食べて頂き、野菜のクズなどを鶏の餌として循環していきます。環境に配慮した農業養鶏ということになります。

養鶏と畑の循環

安全農産基準

有機農業に関する安全農産供給センター基準

2000年春、日本有機農業研究会の「基礎基準」に準拠して安全農産独自の基準を策定しました。その基本的な考え方として、基準の冒頭に、以下の「目指すもの」を掲げています。

私たちの目指すもの

【安全で質の良い食べ物の生産】
安全で質の良い食べ物を量的にも十分に生産し、食生活を健全なものにする。
【環境を守る】
農業による環境汚染・環境破壊を最小限にとどめ、微生物・土壌生物相・動植物を含む生態系を健全にする。
【自然との共生】
地域の再生可能な資源やエネルギーを生かし、自然の持つ生産力を活用する。
【地域自給と循環】
食糧の自給を基準に据え、再生可能な資源・エネルギーの地域自給と循環を促し、地域の自立を図る。
【地力の維持培養】
生きた土を作り、土壌の肥沃土を維持培養させる。
【生物の多様性を守る】
栽培品種、飼養品種、及び野生種の多様性を維持保全し、多様な生物と共に生きる。
【健全な飼養環境の保証】
家畜家禽類の飼育では、生来の行動本能を尊重し、健全な飼い方をする。

また私たちは、消費者会員へ届ける農産物を、栽培内容によって、以下のように分類し、求められればいつでもその内容を公開しています。

栽培内容の分類

●有機栽培
播種・定植前2年以上、農薬・化学肥料を使用していない圃場で栽培されたもの
●転換期間中
農薬・化学肥料は使用していないが、まだ2年が経過していないもの
●栽培期間中無農薬
水田と畑作を交互に実施しており、水田で除草剤を使うが、畑作の野菜には農薬を使用していないもの
●低農薬栽培
センターと協議・相談の上、必要最小限の農薬を使用して栽培されたもの

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